in the place...

in the place...(現場で) また、いつか会う人のためにも、これから出会う人の為にも、そんな出逢ったときの話のネタにして欲しくて・・・。 全ては、in the place.現場で起きています。

Category: スポンサー広告

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Category: 未分類

Comment (0)  Trackback (0)

The another story of ...#2

「――野比!!何度言わせるんだ!!」

「す、すみません……!!」

オフィスの一角で、僕は相変わらず上司に怒鳴らていた。提出した書類に、不備があったからだ。

「……まったくお前は、なぜそういつもいつもミスばかりするんだ。お前が作ってるのは、ただの紙きれじゃないんだぞ?この会社の、必要な書類なんだ。少しは自覚しろ」

「はい……」

この上司は、本当に口煩い。だけど、本当は優しいのも僕は知っている。以前僕がとても大きなミスを犯した時、必死に僕を守ってくれた。そのおかげで、なんとか始末書だけで済んだことがある。
感謝はしているが、こう毎日毎日怒鳴られては凹むものは凹む。
……まあ、僕が悪いんだけど……


「――大変だったね……」

落ち込み通路のソファーに座ってると、突然横から声をかけられた。

「咲子さん……」

「お疲れ様。のび太くん」

……咲子さんは、いつもと変わらない笑顔を僕に向けていた。

「――もう、のび太くんは本当にいっつも怒られてるよね」

「う、うん……ごめん……」

「なんで私に謝るのよ。だいたいのび太くんはね、ちょっと気が弱すぎるよ?もうちょっと男らしくしてみたら?」

咲子さんは、ちょっと気が強い。こうやって毎回慰めてくれてはいるが……けっこう、言葉がキツイ。

「……ってことで、ちょっと言ってみて!!」

「……え?え?」

「もしかして、聞いてなかった?」

「ああ……ご、ごめん……」

「はあ……もういいわ。――はい、じゃあ私の言葉に続いて!」

「う、うん!」

「――今度!」

「こ、今度!」

「お礼に!」

「お礼に!」

「食事でも!」

「食事でも!」

「行きませんか?」

「行きませんか?」

「――ええいいわ!行きましょ!」

「………へ?」

次の休日、僕はなぜか咲子さんと街を歩いていた。

……そう言えば、紹介が遅れていた。
花賀咲子さんは、僕の仕事場の同僚だ。小学生の時にドラえもんが道具の“ガールフレンド・カタログ”で見たことがあった。……もっとも、それを思い出したのは、ごく最近だが。
咲子さんは、職場では人気者だ。仕事が出来て、明るくて、世話好き。彼女がいるところからは、いつもみんなの笑い声が聞こえてきていた。
僕は、咲子さんとは同期になる。同じ時期に入社したのだが、全然ダメな僕とは全然違う。
正直に言えば、少しだけ、嫉妬してしまってる。

「――それでのび太くん。今から、どこに連れてってくれるの?」

「え、ええ?僕が決めるの?」

「当然でしょ。男なんだし」

「……それは偏見だよ……」

「いいから!ほら、さっさと決めて!」

無茶振りされても困る。こうやって女の人と出かけたことなんて、しずかちゃんぐらいしかないのに……
でも、咲子さんは何かを期待するように僕を見ていた。何か決めないと、またどやされる。

「……じゃあ……え、映画…とか?」

「う~ん……ちょっとベタすぎるけど……まあ合格ね。――さ!行きましょ!」

僕の前で一度クルリと回った咲子さんは、そのまま歩き出した。しかたなく、僕もそれに続くのだった。

「――面白かったね!!」

「う、うん……」

映画館を出た後、咲子さんは上機嫌だった。よほど気に入ったようだ。
映画は、咲子さんが選んだ。というより、僕は何もしていない。映画館に着くなり、咲子さんは有無を言わさずその映画のチケットを購入したからだ。
咲子さんが選んだ映画は、外国の恋愛ものだった。まあ、よくあるパターンの映画だから、内容は割愛しよう。
ただ、僕としては少し退屈なものだった。もちろん、それは彼女には言わないけど。だって彼女はこんなに上機嫌なんだ。それにわざわざ水を差すこともないだろう。

「ねえねえ!次、どこ行こっか!」

「つ、次?ええと……」

「もう……女の子とデートするんだよ?デートプランくらい立ててよね」

「で、デート!?」

「何驚いてるのよ。当然じゃない」

「ま、まあそうなんだけど……」

……全然、そんな自覚なかった。昼過ぎに集まるように言われてたから、晩御飯まで時間つぶしのために映画を選んだんだけど……これは、デートだったのか……

「まあいいわ。じゃ、ついて来て」

「え?で、でも……」

「いいからいいから!ほら!」

咲子さんは、僕の腕を引っ張り始めた。人通りの多い道路を、僕らは歩く。すれ違う人は不思議に思うかもしれないな。笑顔で男を連れまわす女性と、腕を引っ張りまわされる男。

(完全に、立場が逆だな……)

そうは思いつつも、なされるがままになるしかなかった。

「――ふ~。さすがに疲れたね。ちょっと休憩しよ」

少しだけ強く息を吐いた咲子さんは、ショッピングモールの片隅にあるベンチに座り込んだ。そして僕もまた、そこに座った。

「……賛成」

さんざん町内を連れまわされた僕は、けっこう限界に来ていた。さすがの咲子さんも疲れたようだが……それでもまだ余裕がある。タフだな、この人。

「私、ちょっと飲み物買って来るね」

「うん。分かった」

「待っててね!」

そう言い残し、咲子さんは走り去って行った。遠くなる彼女の背中を見送った後、上を見上げてみた。
ショッピングモールの天井は透かし窓になっていて、青い空が見えていた。雲はゆっくりと進んでいる。こんな日は河原で昼寝でもしたいものだが……

「……なんでこんなことになったのやら」

心の声が、漏れてしまった。



「――あら?」

背後から、何かに気付いた声が聞こえた。どこか、聞き覚えのある声だった。僕は無意識に、後ろを振り返った。

「ん?」

そこにいた人物を見た僕は、思わず立ち上がった。


「……しずかちゃん……」

「……久しぶりね。のび太さん……」


――実に、1年ぶりの再会だった……



つづく
スポンサーサイト

Comments






カウンター
プロフィール

alpen

Author:alpen
もはや本名で出会う必要はないでしょう

検索フォーム
ブロとも申請フォーム
QRコード
QR

1234567891011121314151617181920212223242526272829303105 2017
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。