in the place...

in the place...(現場で) また、いつか会う人のためにも、これから出会う人の為にも、そんな出逢ったときの話のネタにして欲しくて・・・。 全ては、in the place.現場で起きています。

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The another story of ...#10

民宿を出るころには、ジャイアン達もようやくなんとか回復していた。少しまだフラフラしてるけど、夜よりは何倍もましのようだ。

しかしながら、人生とは難しいものだ。
地獄を見ていた二人を介抱したのが僕。だが家に帰ってから、今度は僕に地獄が訪れていた。

「……あぅぅ……し、死ぬ……」

帰宅した僕は、なんとなく体の怠さを感じ、その日は早く寝た。次の日が仕事でもあったし、体調管理に万全を期すことこそ、一人前の企業戦士だからだ。

……だが、翌朝、あまりの気怠さに目を冷まし、水銀の温度計を使用したところ、なんと数値は39度オーバーを叩き出していた。
どうやら、相当疲れていたようだ。

仕方なく会社に連絡を入れ、その日は休むこととした。
本日の企業戦士は、しばしの休息となった。

――ピンポーン

寝ていた僕は、玄関から鳴り響くチャイムの音に目を覚ます。
時刻は夕方。
こんな時間に来るのは、大抵新聞の勧誘であることを、僕は知っている。

フラフラとしながら玄関に向かい、ガチャリとドアを開けた。

「――新聞ならいりませんよ」

「……新聞?なんのこと?」

「…………へ?」

目の前にいた人物は、キョトンとしていた。まあいきなり新聞の勧誘と間違えられたわけだし、無理もないわけで……
――いやいや。そうじゃなくて、その前に……

「さ、咲子さん?なんでここに……」

僕の問いにニッコリと笑みを浮かべた咲子さんは、手に持っていた膨らんだスーパーのビニール袋見せる。
そして……

「――晩ごはん、作りに来たの。……おじゃま、してもいい?」

「――少し散らかってるけど、気にしないで」

「おかまいなく。……うわぁ。ここが男の人の部屋かぁ……」

「あ、あんまりじろじろみないで欲しいかも……」

「んん?じろじろ見られたくないものでもあるの?」

咲子さんは、意地悪な笑みを浮かべていた。僕はそれに失笑を返す。

来たことに驚いたが、さすがに追い返すのは可哀想と思い、彼女を部屋に招き入れた。
実のところ、女の人を家に入れるのは、彼女が初めてだ。しずかちゃんも入れたことない。
少しだけ片付けをしたあと、僕は布団に戻る。彼女はそんな僕の横にちょこんと座り、引き続き部屋の中をきょろきょろと見渡していた。
その目は、好奇心旺盛な子供のようだった。

「……よくここが分かったね」

「うん。上司に聞いたの」

「……教えてくれたんだ」

……上司よ。個人情報とはなんぞや。

「……じゃあさっそく、キッチン借りるね。のび太くんは寝てて」

「あ、うん……」

そう言うと、咲子さんは持ってきていた花柄の赤いエプロンを身に付けた。
そして、軽快なリズムで、包丁の音を響かせ始めた。

「……」

不思議な光景だった。
僕は、料理をする彼女の背中を眺めていた。

前までは、こうして見る女性の姿は、しずかちゃんしかいないと思っていた。
……でも、今僕の目の前にいるのは、彼女ではない。
それが何だかとても不思議なことで、咲子さんの後ろ姿を、ただぼーっと見ていた。

すると、急に咲子さんは後ろを振り返る。そして、僕が見ているのに気付いた瞬間に視線を前に戻した。それから、ちょくちょく後ろを振り返りはじめた。

「……?どうかした?」

すると、彼女は照れるように顔を背けながら、呟く。

「……そんなに見られたら、少しだけ、恥ずかしいかも……」

「あ――、ご、ごめん……!!」

慌てて布団を被ろうとした。でも――

「――あ、待って!」

「え?」

「……やっぱり、見てていいよ……」

「う、うん……」

……なんなの、いったい。

「――どう?おいしい?」

咲子さんは、作った料理を持つ僕に、キラキラした視線を送りながら聞いてきた。
彼女が作ったのは、野菜がたくさん入った雑炊。
美味しそうだ。確かに美味しそうだ。
だが……

「……いや、感想聞かれても、まだ食べてないから……」

「え?――あ、そうだったね。ごめん、つい……

「いいさ。今から食べるから。――いただきます……」

とりあえず、一口ぱくり。

「……」

「……」

(……あれ?)

ちょっと待ってほしい。
雑炊ってのは、確か出汁とか醤油とかが入って、懐かしい味のする日本食のはず……
だが目の前にあるモノは、なぜか洋風テイスト。醤油も出汁も感じない、ネイティブな味が口に広がる。初めて口にするような味だ。

だが一番不思議なのは、それだけ本家雑炊からかけ離れているはずなのに……

「……お、おいしい……」

「ほ、ほんと?」

「う、うん。とてもおいしいよ……」

なぜだか分からないけど……

「いっぱいあるからね。たくさん食べて、早く治さないと」

「う、うん……」

その味は、なぜだか食欲を刺激した。
そして僕は、気が付けば、3杯もおかわりをするのだった。

たらふく雑炊(?)を食べた後、咲子さんは洗い物をする。それだけではなく、掃除、洗濯をして、仕事に来ていくスーツにアイロンまでかけてくれた。
まさに主婦。今すぐにでもお嫁に行けるだろう。

「――今日はありがとう、咲子さん」

「ううん、いいの。私が好きでしてるだけだし」

「……え?」

「え?――あ!違う違う!今のはそういう意味じゃなくて!」

「ええっと……」

「――あ!違うんじゃなくて!好きなのは本当だけど!今のはそういう意味で言ったんじゃなくて――!!」

彼女は、顔を真っ赤にしながら、顔を隠すように必死に手を振っていた。
その姿は、なんだかとても愛らしく思えた。
自然と僕は、お腹を抱えて笑っていた。
笑う僕の姿を見た咲子さんは、顔を膨らませ顔を伏せてしまった。

――ふと、咲子さんはあるものに気付いた。

「……これって……アルバム?」

それは、僕の小・中学の時の、みんなで撮った写真達だった。

もしかして人増えた?
ちょっと緊張……



「……これ、見ていい?」

「……うん。いいよ」

僕がそう言うと、咲子さんはアルバムをめくり始めた。彼女が見る傍らで、僕もアルバムを覗き込む。
写真の中の僕らは、あの頃のまま時間が止まっていた。
あの頃、彼が取り出す不思議な道具により彩られた、夢のような毎日……でも、彼の写真は1枚も残っていない。不自然に抜き取られたアルバムのポケットが、ところどころ散見された。
その何もないポケットを見るたびに、思い知らされる気分になる。
彼が、僕の隣にいないことを……

「――これ……」

感傷に耽っていると、咲子さんが言葉を漏らした。
彼女の見つめる先には、小学生の時の写真が。それは、みんなで白亜期に行き、キャンプをした時の写真だった。
その中で、僕はあの子の隣に立っていた。

「……これ、あの時の……」

「……うん。しずかちゃん……」

「……」

そのまま、彼女は口を閉ざした。

「……やっぱり、幼馴染み……なんだね……」

ようやく彼女が口にしたその言葉は、とても寂しそうだった。
そしてそのまま、彼女は続ける。

「……ずるいなぁ、源さん……」

「……ずるい?」

「私には、のび太くんとの記憶は、会社に入社した時からしかないんだよね。
――だけど源さんは、のび太くんとの思い出が、こんなにたくさん残ってる。
……やっぱり、羨ましいな……」

「……」

「私ね、最近考えてるんだ。私とのび太くんは同じ地元なのに、なんでもっと早く会えなかったんだろうって。
もっと早く会っていれば、こんなに悩むこと、なかったかもしれないのに……」

「……咲子さん……」

「……」

「……」

部屋の中は、静まり返った。
台所の水道から漏れる水滴の音が、やけに大きく聞こえていた。
ポタリ……ポタリ……と。

「――私、そろそろ帰るね」

いきなり、咲子さんは立ち上がり、荷物をまとめ始めた。

「え?あ、うん……」

「……じゃあね。あ、寝てなきゃダメだよ?」

そう言い残し、逃げるように玄関に向かう彼女。
でもここで、僕は彼女が荷物を忘れていることに気付いた。

「――あ、咲子さん!これ――!」

その荷物を手に持ち、前屈みに立ち上がり彼女の方に向かう。

――すると、急に目の前が真っ暗になった。
激しい目眩に苛まれ、目の前が歪む。

(やばっ……そういえば、まだ熱が……)

フラフラと彼女の方に近付いていった。

「え――?」

彼女が僕に気付き振り返ると同時に、僕の意識は、そのまま暗闇の中に沈み始める。
体の力は抜け、彼女に覆い被さるように倒れ込んだ。

「あ――」

彼女の口から漏れた声だけが耳に入る。

それから先は、覚えていない。
……ただ最後に、彼女の腕に包み込まれたような……そんな、気がした。

「……うぅ……うぅん……」

気が付いた時には、朝の光が窓から射し込まれていた。
どうやら、そのまま眠ってしまったようだ。
体は軽い。熱も下がったようだ。

「……うん?」

その時、僕はようやく気が付いた。僕の腹部に顔を埋め、座ったまま眠る彼女の姿に――

彼女の横には、水が張った洗面器があった。そして僕ま枕の横には、少し濡れたタオルも落ちていた。
それが意味することは、つまり……

(一晩中、看病してくれてたのか……)

無意識に、彼女の頭を撫でていた。

――その時だった。

ピンポーン……

玄関から、チャイムが鳴り響く。
こんな時間に誰だろうか――。そんなことを思いながら、彼女を起こさないように横にずらし、玄関に向かった。




咲子ちゃん、女子力高すぎでしょ。
こういう子、嫁にしたいわ。

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もはや本名で出会う必要はないでしょう

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