in the place...

in the place...(現場で) また、いつか会う人のためにも、これから出会う人の為にも、そんな出逢ったときの話のネタにして欲しくて・・・。 全ては、in the place.現場で起きています。

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The another story of ...#18

「いやあ!まさか、咲子の彼氏がのび太だったとはな!」

咲子さんの部屋で、舞さんはビールを片手に豪快に笑う。

「ホント不思議だね……まさか、お姉ちゃんの知り合いなんてね……」

咲子さんはおつまみを出しながら、感慨深そうに呟く。

「………」

一方、話題の中心にいる僕は、気が気ではなかった。

舞さんは僕が咲子さんの彼氏だと気付くなり、しばらく顔を見た後、まるで何事もなかったかのように接し始めた。
いったい、何を考えてるのだろうか……

「――あれ?ビールなくなっちまった……。咲子!ちょっとビール買ってきて!」

「もうお姉ちゃん!今日はちょっと飲み過ぎだよ!」

「固いこと言わないって。せっかくのび太もいるんだし。な?のび太?」

「は、はい……」

「――ってことだ。すぐそこのコンビニにあるだろ?ちょっと頼むよ」

「……もう。仕方がないなぁ……」

ぶつぶつ文句を言いながら、咲子さんは部屋を出ていった。

残されたのは、僕と舞さん。玄関が閉まる音が響くなり、舞さんは先ほどまでの緩い顔を一変させ、真剣な表情を見せた。

「――で?これはどういうことだ?説明してもらおうか……」

その目には、凄まじい威圧感があった。
そんな視線を受けた僕に抵抗など出来るはずもなく、ことの経緯を洗いざらい説明した。

「――そうか……咲子が……」

「もちろん、僕からも交際を申し込みました。それが、今の関係です……」

「そうか……」

難しそうな顔をしながら話を聞いていた舞さんは、話を聞き終えると目の前にあるビールを一気に飲み干した。

(まだ入ってたんだ……ってことは、さっきのは僕と二人になる口実だったわけか)

「……まさか、しずかの最大のライバルが、我が妹とはな……。世間ってのは、つくづく狭いもんだ……」

「……僕も、まさか舞さんが咲子さんのお姉さんとは思いませんでした……」

「まあ、いくら信じられなくても、純然たる真実としてあるわけだから、そこは何を言っても無駄だろう。
――それより、問題はアンタのことだ……」

「ぼ、僕ですか?」

「ああそうだ。――のび太、お前、正直な話、どっちなんだ?」

「どっちなんだと言われましても……」

「簡単な話だ。しずかと咲子……この日本においては、一夫多妻制は認められていない。どちらかを選ばなくてはならない。……お前は、どっちを選ぶんだ?」

「そ、それは……」

「即答――出来ないんだな」

「………」

舞さんの威圧感は、僕の心臓を鷲掴みにするかのようだった。
それは、即答できなかった僕に対する、舞さんなりの怒りなのだろう。僕は、黙り込んでしまった。

「……すまない。少し意地悪が過ぎたな」

「……いえ」

「だがのび太。一つ、理解しておけ。お前は確かに優しい。相手のことを想い、気遣いが出来る男だ」

「………」

「……でもな、その優しさが、返って誰かを傷付けることもある。
今お前は、二つの岐路に立っている。しずかか、咲子か……どちらの気持ちもお前に向いている以上、そのどちらかを選ばなくちゃならない。
そしてそれが意味することは、必ず、誰かが傷付くということだ」

「………」

「咲子か、しずかか……それともその両方か……それは、お前にしか決められない。そしてな、その傷は、決断が遅ければ遅いほど、深く突き刺さるんだよ」

「……はい」

「正直、私はどちら側に付くことも出来ない。咲子は、私の大切な妹だ。しずかは、私の可愛い部下だ。二人とも私の宝で、幸せになって欲しい」

「それは……当然だと思います」

「とにかく、よく考えておけ。そして、早く決断しろ。じゃないと、いずれアンタを含めた全員が傷付くことになる。深く、惨たらしく。
――そうなったら、私はアンタを一生許さない。たぶんな」

「………」

「……私は、のび太、お前のことも好きなんだよ。だから、私にそう思わせないでくれ」

「……はい」

「頼んだぞ……」

「………」

それ以降、舞さんは何も言わなかった。

それから、僕は咲子さんが帰って来るのを待って、自宅に帰った。
咲子さんは名残惜しそうにしていたが、さすがに時間も遅かったので引き留めることはなかった。
舞さんはヘラヘラ笑いながら手をひらひら振っていたが、帰り際、静かに耳打ちをしてきた。

『のび太……しっかりな……』

とても、穏やかな口調だった。――でも、とても重い言葉だった。

夜道を歩きながら、トボトボと帰っていく。
夜風は冷たく、心まで冷やすかのように僕の体を通り抜ける。
今日は星が見えない。月のない夜だからよくわからないが、薄く雲が張っているのかもしれない。
暗闇の空を見上げて、一度足を止めた。
そして空の彼方に向けて、呟く。

「……ドラえもん、キミなら、今の僕に、なんて言うんだい?」

この街のどこかにいるなら、同じように、この空が見えているだろう。会えない彼に、空を経由して言葉を送ってみた。
――当然、空は何も答えることはない。

「……なんて、ね……」

見上げることを止め、再び歩き始める。

(いつまでも、彼に頼るわけにはいかないよね。彼は、僕ならいい方向に決めれるって言ったんだ。……それで、十分じゃないか……)

まずは、自分で出来ることをしよう。そう、思った。
僕は、誰もいない夜道を歩いて、家に帰った。



そろそろ、しずかちゃんの出番だな。
つーか、どっちにするんだ?

じゃ、また夜中
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