in the place...

in the place...(現場で) また、いつか会う人のためにも、これから出会う人の為にも、そんな出逢ったときの話のネタにして欲しくて・・・。 全ては、in the place.現場で起きています。

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The another story of ...#19

家に帰った後、僕は父さんと酒を交わす。
父さんは、上機嫌だった。顔を赤くして、ニコニコ笑っていた。

「――まさか、のび太と酒が飲める日が来るとはな!月日が経つのは早いものだ!」

父さんは僕のコップに、次々とビールを注ぐ。

「……僕、そんなにお酒強くないんだけど……」

「細かいことは気にするな!さあ!どんどん飲め!」

父さんはすっかり酔ってしまっているようだ。ノリが、会社の上司によく似ている。
苦笑いする僕に、追加にビールを持って来ていた母さんが後ろから笑いながら話しかけて来た。

「お父さんね、楽しみにしてたのよ?のび太とお酒を飲むことを」

「父さんが?」

「そうよ。いつも家で晩酌をする時に言ってたの。ここに、のび太がいてくれたらなぁって……」

「………」

「口では言わないけど、お父さん、寂しかったのよ。……もちろん、私もね……」

「……うん」

両親を安心させようと思って一人暮らしをした僕だったが、父さんと母さんは、別のことを思っていたようだ。
いくつになっても、子供は子供……誰かが言った言葉だ。
その意味が、少しだけ分かったような気がする。
父さんは相変わらず笑顔でお酒を飲む。母さんはお酒を飲まないのに、そんな僕達を座って見ている。
ずっと一緒に暮らしていた父さんと母さん。でも、一緒にいた時には薄れていたモノが、僕の中にはっきりと浮かび上がっていた。
――父さんと母さんの想いが、僕の中に注がれていたようだった。

「……父さん、お酒、注ぐよ」

「お!ありがとうな!」

その日は、夜遅くまで父さんと酒を交わす。心の中のしこりのようなものが、少しずつ溶けだしている気分だった。

――ふと、僕は目を覚ました。

「……うぅん……寝ちゃったのか……」

時計を見れば、時刻は真夜中。頭が痛い……

その時、僕は気が付いた。
今の掃出し窓が開き、そこに、父さんが座っていた。母さんの姿はない。どうやら、先に眠ってしまったようだ。

父さんは僕が起きたことに気が付き、微笑みながら顔を振り向かせた。

「……すまん、起こしてしまったか……」

「ううん。大丈夫。……こんな夜中に、何をしてるの?」

「ああ。……月を、見ていたんだ……」

「月を?」

「そうだ。……なあのび太、こっちに来て、一緒に見ないか?」

「……うん」

僕は、促されるまま父さんの隣に座る。

「……綺麗だね」

「そうだろ?月が見えて、のび太がいて、のび太と酒を飲んで……最高の夜だ……」

僕らは月を見上げる。
幸い、今日は雲がなかった。窓からは丸い満月が空に座し、夜の街を仄かに照らす。
星々の光は月光に遮られ、あまりはっきりとは見えない。でも、まるで星達の分まで輝くように、月は、優しく光を降り注がせていた。

少しの間、僕と父さんは、月の光が織りなす神秘的な劇場を、静かに眺めていた。


「――ところでのび太」

突然、父さんが切り出した。

「うん?何?」

「誰か、いい人は見つかったか?」

「いい人?」

「結婚相手のことだよ」

「け、結婚!?」

「何を驚いてるんだ。のび太ももういい年だ。そろそろ結婚を考えてもおかしくはないぞ?」

「そ、そうなんだろうけど……いきなり結婚なんて……」

戸惑う僕に、父さんは声を出して笑う。

「いやいやすまん。ちょっと話を飛躍させ過ぎたな。……まあ、結婚まではいかなくても、付き合ってる人はいないのか?」

「……まあ、一応……」

「そうか……それはよかった……」

付き合ってるのは付き合ってる。……だけど、この前の舞さんに言われたことを思い出した。
……結局僕は、中途半端なんだ。

「……のび太、お前は、少し抜けてるところがあるからな。お前に合うのは、きっと、しっかりした人だろうな」

「う、うん……」

「まあいずれにしても、自分の目で見て、頭で考えて、相手を決めろ。そしてな、一度決めた相手は、一生大事にしろ。
家族を蔑ろにする奴は、幸せなんて手に入れることは出来ないんだ。
どれだけ仕事がうまくいっても、どれだけお金があっても、幸せってのは、それとは関係ないところから生まれるものなんだよ」

「……」

「……大丈夫だ、のび太。お前なら、必ず幸せな家庭を作れるはずだ。――何せ、お前は僕の、自慢の息子だからな」

「……0点ばっかり取ってたけどね」

「勉強なんて、最低限のことさえしていればいいさ。実際に、お前は高校まで卒業出来たんだ。十分だ」

「そっかな……」

「そうだ。お前は、自分の人生に自信を持っていい。――お前は、幸せを生み出すことが出来る」

「……ありがとう、父さん」

「……さて、そろそろ寝るとするか」

「うん……」

そして僕らは、それぞれの寝室に戻る。

僕は二階に上がり、布団に横になった。
久しぶりの自分の布団。眠る前に、一度押入に目をやる。
そこにいた彼は、今何をしているのだろうか………そんなことを考えていた。

……いや、それももう止めにしよう。
父さんも、先生も、舞さんも、そして、彼も……みんな、僕に自信を持っていいと言っていた。

僕は、いつも彼に頼ってばかりだった。
全ての願いを、叶えてくれる彼。困った時は、いつでも助けてくれた彼。

……でも僕は、もう大人になった。
子供のころにはなかった責任だとか柵(しがらみ)だとかが、今の僕の周りにはある。
その中で僕は、自分で考えて、行動して、いくつもの選択肢を選んでいかなければならない。

それは、とてもキツイことだと思う。時には落ち込むこともあるだろう。どちらを選んでも、不運しかない状況も出てくるはずだ。
でもそれは、誰でも経験することなんだ。誰でも悩んで、それでも選択を繰り返しているんだ。
僕ばかりじゃないんだ。それなのに、ずっと彼のことを頼り続けているわけには行かない。今僕は、自分の足で歩き出すべきなんだろう。
――ドラえもんは、きっとそれを僕に伝えたくて、手紙をくれていたんだ。
姿を見せず、僕が自分の足で歩くように促していたんだ。

だったら、彼のためにも、僕は足を踏み出す。ゆっくりでも、自分の足でこれからを歩いて行く。

(じゃないと、キミに笑われるしね……)

最期にもう一度だけ押入に視線を送った僕は、一人静かに、微睡の中に意識を沈めていった。



寝よ。
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